泣き出してしまった人が次の言葉を発するまでのあいだの時間。その間ずっと黙りこくってしまう。この世のどんな言葉も正解ではないような気がして、どうにもうまく言葉が出てこない。初めてにんじんを花形に型どった人は、発想の美しさとそれを見た人が抱く感情を想像してきっと泣きたくなっただろうね。退屈しないように日々工夫してくれてありがとうね。Googleで【食事 見る専】と検索してみた。どうやらそんな人はいないらしい。
10月中旬には新橋で映画監督の今泉力哉と遭遇して少しお話をした。等間隔に✧︎があしらわれたすりガラス越しに見える、祖母の丸まった背中。死ぬまでに縁側からまたその景色が見れるといいなと切に願っている。走馬灯がオーダーできるとしたら、こういう類のものをたくさん詰め込みたいと思う。ひょっとすると走馬灯は人生で最後に観れる映画なのかもしれない。
"き"が3連続で発音されたときに｢これはもう樹木希林だな｣と思う、脳が先回りしてワードを予測するあの感覚。半年前、餃子の王将で後輩に｢概念でもいいんですけど、櫻澤さんは最終的に何になりたいんですか？｣と聞かれた。カッコイイ質問だと思った。アダルトビデオの中の男が、密室で｢実はバンドをやめて家業を継がなければいけないんだ…｣と女性に話していた。コイツにもコイツなりの葛藤や人生があるんだなと思ったら、そいつを無条件で抱きしめてやりたくなった。
