家の中に雨が入ってきたらおもしろいかも、と思って窓を開けたまま買い物に行った スーパーでは、レタスの前でわざと難しい顔をしてみたり、きのこの里派に対して過激な思想を抱いてみたり、そのアブナイ思想がバレないようにおすまし顔をしてみたりもした 帰宅してすぐに窓に駆け寄る 実際はレースカーテンの裾が少し濡れてひんやりしているだけだった 自分でもよくわからないけど、雨に対して「いらっしゃい、空からウチなんて遠かったでしょ」と思った

 

いつからか、道向こうのマンションの屋上灯が常に点くようになった 眠れないときにボーッと見ていると妙に安心する ずっと見ていると船尾灯にも見えてくる 甲板に出るみたいにして、縋る気持ちでベランダに出てみる 自分でも気付かないうちにゆっくりゆっくりと沈んでいってるんじゃないかと思って、それが怖くなってまた布団に戻る 翌朝目が覚めたとき、また浮かんでくることができたんだなと思う