9月29日
用があって高田馬場に行った。
ここには、サグラダファミリアのようなスペイン風の建築物が屹立している。本物のサグラダファミリアは何度も修復し、その度に資金難になって改修を中断しているようだが、この建物はすでに完成されているみたいだった。以前、その建物の入口付近で反政府のビラを配っているおばさんを見かけたことがある。通りすがる人々にビラを手渡していたが、どこからともなくやってきた警察にやめるよう強く注意されていた。どうやら無許可でやっていたみたいだった。去り際、おばさんは大きな声でガミガミと警官に悪態をついていた。
高田馬場の警察と反政府おばさんの関係はヒビが入りまくりで、もう修復できそうにないだろうな、などと思った。
10月2日
〜スーパーにて〜
「(お手洗いのことをWCって書くけど、ワールドカップも同じ表記だよな〜)」などと考えながらコーナーを曲がった矢先、主婦が操縦していたショッピングカートに轢かれてしまった。雷のような鈍痛が右足の脛に走る。人生ゲームならきっと2マスぐらい戻っているだろうなと思った。
11月3日
久しく会っていなかった人とお酒を酌み交わし、そこで1年ほど前に書いた文章を褒めていただいた。タイトルまで鮮明に覚えておられて、あぁ365日の中で1日くらいこんな日があってもいいよね、などとぼんやり思った。まったくありがたい限りである。
11月5日
36.5℃の湯船に浸かった。体温と同じぐらいのお湯に浸かると、なんていうか体と水との境目がなくなる感じがして少しだけこわかった。
11月16日
ゲラの人とお酒を飲んだ。何言ってもわろてくれて、こんな楽しいことってあるんだなと思った。
12月15日
「オリオン座は3つしかベルトの穴が空いてない。お腹パンパンになったらどうするんだ」とかふざけたことを言っていたら、一筋の星が流れた。あぁふたご座流星群、ふたご座流星群。
12月16日
駅へ向かう道すがら、あまりのストレス故「ゔわ"っ"」と小声で叫んでしまった。生物の断末魔みたいなそれは、道沿いの犬小屋で眠っていた主の、うす茶色の耳をピクっと動かすことぐらいしかできなかった(起こしちゃってごめんね許してワン)。
12月19日
気付いたらおれはなんとなく冬だった。中野駅の喫煙所前を通り過ぎたとき、そういえば誰にもタバコの吸い方を教えてもらっていないなと思った。ああいうのはどこのタイミングで、いったい誰に教えてもらうのだろうか。いささか不思議である。
だれか、ガス電気水道インターネットの契約の仕方とか、オシャレなカフェでの佇まいとか、明日の天気とか、何をされたら喜ぶのかとか、何をおもしろいと思うのかとか、好きな言葉とか、最近あった良かったこととか、だれか、だれかおれに教えてくれ。気付いたらおれはなんとなく冬だった。
12月28日
目的地に向かう道中、占い師に呼び止められた。突然のイベントに怯んでいると、開口一番「アンタ世界を恨んでいる目をしているね」と言われた。「はぇ〜」なんて適当に相槌を打ち、その場から逃走した。
12月29日
「怒るってことは、裏っ返すと他人に期待しすぎていることなんだと思います。他人に対してこうしてくれたらいいなとか、こうするはずだ、みたいな理想を勝手に押し付けて、それが叶わなかったらなんでなんだと怒る。おれの良くないところでもあって直したいんですけど…すみません、これは余談ですね。まぁ全部とは言わないけど、怒りの仕組みって概ねこれじゃないですかね。どう思います?」
夢の中で、自分は浅い考えを吐き散らかしながら、向かいの席に座る本田圭佑に話を振っていた。彼がなにを答えてくれたかはさっぱり覚えていなくて、目ん玉デケェな〜と思ったことだけが鮮明に思い出されるのであった。